DNS over HTTPS(DoH)は、ドメイン名をIPアドレスへ変換するDNS問い合わせをHTTPSで送る仕組みです。
DoHは、DNS問い合わせを経路上から見られにくくしますが、通信全体、端末、偽サイトを保護する仕組みではありません。
設定する場合は、利用するブラウザやOS、ネットワークの管理方針、DNSリゾルバーの保存方針を確認してください。
DNSとHTTPSを定義する
DNS(Domain Name System)は、人が読むドメイン名を、通信に使うIPアドレスへ対応づける仕組みです。
ブラウザでウェブサイトを開くときは、まずDNSへ接続先のIPアドレスを問い合わせ、その後にウェブサーバーへ接続します。
HTTPSは、ブラウザとウェブサーバーの間で通信内容を暗号化する仕組みです。
HTTPSでページの内容や入力データが保護されていても、DNS問い合わせの扱いが同じように保護されるとは限りません。
DoHは、DNS問い合わせをHTTPSの通信に包んで送ります。
通常のDNSで何が起きるか
通常のDNSでは、端末やルーターが設定されたDNSリゾルバーへ問い合わせます。
問い合わせの内容が暗号化されない方式では、通信経路上の機器や管理者が、どのドメインを問い合わせたか確認できる条件があります。
HTTPSを使っていても、DNS問い合わせの段階で接続先のドメインが見える場合があります。
DNS応答に偽の情報を混ぜ、リゾルバーのキャッシュへ残す攻撃は、DNSキャッシュポイズニングと呼ばれます。
RFC 3833は、キャッシュポイズニングをDNS固有の脅威として説明しています。
ただし、DNS問い合わせが見えることと、通信内容や入力内容が読めることは同じではありません。
HTTPS、DNS、端末、アカウントの保護範囲を分けて考えます。
DoHの仕組み
DNS over HTTPS(DoH)は、DNS問い合わせと応答をHTTPSで運ぶプロトコルです。
端末やブラウザがDoHに対応したDNSリゾルバーへ接続すると、通常の平文DNSを使う場合より、経路上の第三者が問い合わせ内容を読み取りにくくなります。
DoHの問い合わせ先になる事業者を、DoHリゾルバーと呼びます。
ブラウザでDoHを設定すると、通常のDNSリゾルバーではなく、ブラウザが指定したリゾルバーを使う場合があります。
OS、VPN、企業ネットワーク、ペアレンタルコントロールなどがDNSを管理している場合は、ブラウザの設定より別の設定が優先されることがあります。
DoHの導入目的と、実際にどのリゾルバーを使っているかを分けて確認してください。
保護できる情報と保護できない情報
DoHで保護しやすくなる情報
- DoHリゾルバーまでのDNS問い合わせ
- 経路上の第三者によるDNS問い合わせの読み取り
- 経路上でDNS応答を書き換えられるリスクの一部
DoHを使っても、DoHリゾルバーは問い合わせを受信します。
リゾルバーの保存期間、利用目的、第三者提供、削除方法は、事業者の公式プライバシー方針で確認してください。
DoHで保護されない情報
- HTTPSで保護されていないウェブ通信の内容
- DoHリゾルバーから先の通信全体
- 端末のマルウェア、入力内容、画面、Cookie
- 偽サイトへのアクセスや、偽サイトへの情報入力
- 実際の接続先IPアドレスや、他の経路から推測される情報
- 組織やネットワーク管理者が別の仕組みで取得する情報
DoHはDNS問い合わせの保護を担います。
通信内容はHTTPS、端末はOSやセキュリティ機能、アカウントは認証と復旧手段で別に保護します。
DoHとVPNの違い
DoHとVPNは、暗号化する対象と通信相手が異なります。
| 項目 | DoH | VPN |
|---|---|---|
| 主な保護対象 | DNS問い合わせ | 端末からVPNサーバーまでの通信経路 |
| 適用範囲 | 設定したブラウザやOS | VPN設定が適用された端末やアプリ |
| 通信相手 | DoHリゾルバー | VPN事業者のサーバー |
| IPアドレスの扱い | 接続先IPを隠す機能ではない | 接続先から見える送信元IPの扱いは、VPN製品と接続設定に依存する |
| 端末のマルウェア | 保護しない | 保護しない |
| 偽サイトへの入力 | 防がない | 防がない |
VPNを使うとDNS問い合わせもVPN経路を通る場合がありますが、実際の処理はVPN製品と設定に依存します。
DoHをVPNと併用する場合、どの事業者がDNS問い合わせを受け取るのかを確認してください。
VPNの機能と限界は、VPNでできること、できないことで確認できます。
ブラウザ、OSでの設定
設定画面の名称、対応状況、既定値は、ブラウザ、OS、地域、管理ポリシーによって変わります。
Chromeで設定する場合
Chromeには、セキュアDNSに相当する設定が用意されています。
一般には、設定のプライバシーまたはセキュリティにあるDNS設定を開き、機能を有効にしてリゾルバーを選びます。
表示名と場所はバージョンによって変わるため、Chromeの公式ヘルプを確認してください。
Edgeで設定する場合
Edgeには、セキュアDNSを有効にし、ウェブサイトのネットワークアドレスを問い合わせる方法を指定する設定があります。
Microsoftの公式案内では、Edgeの設定からプライバシー、検索、サービス、セキュリティの順に開いてセキュアDNSを設定します。
表示名と場所は更新されるため、利用中のEdgeの公式ヘルプを確認してください。
Firefoxで設定する場合
Firefoxには、プライバシーとセキュリティにDNS over HTTPSの設定があります。
保護モード、リゾルバー、企業ネットワークでの例外などが表示される場合は、設定の意味を確認してから変更します。
Mozillaの公式ヘルプで、利用中のバージョンに対応した手順を確認してください。
WindowsでDoHを設定する場合
Windows 11の手動DNS設定では、DNS over HTTPSをオフ、オン(自動テンプレート)、オン(手動テンプレート)から選べます。
フォールバックを許可すると、DoHで送れない場合に平文DNSへ切り替わるため、暗号化されない問い合わせを送らない設定と区別してください。
Windowsのエディションや更新状況で画面が変わるため、利用中の公式設定画面で確認します。
AndroidのプライベートDNSを確認する場合
Androidの「プライベートDNS」は、Androidが提供するDNS over TLS(DoT)の機能です。
DoTはDNS問い合わせをTLSで保護する方式であり、HTTPSで運ぶDoHとは通信方式が異なります。
Googleの公式案内では、Pixelの設定から「ネットワークとインターネット」「プライベートDNS」を開き、「オフ」「自動」「プライベートDNSプロバイダのホスト名」を選びます。
プライベートDNSが保護するのはDNSに関するやり取りだけで、ウェブ通信全体を保護するVPNではありません。
Androidのバージョンやメーカーで設定名が異なるため、端末の公式ヘルプも確認してください。
Safari、macOS、iOSで設定する場合
Safariの設定画面だけで、すべての環境に同じDoH設定を行えるとは限りません。
macOSやiOSでは、OSの設定、構成プロファイル、管理機能、専用アプリなど、採用する方法によって対象範囲が変わります。
構成プロファイルを入れる場合は、配布元、署名、対象範囲、削除方法を確認します。
Appleの管理対象端末では、DNS設定ペイロードを使ってDoHまたはDoTを指定できます。
Appleの企業向けネットワーク案内にも、iOS、iPadOS、macOSなどがDoH用のAppleホストへ接続する説明があります。
仕事用端末や学校の管理端末では、管理者の許可なくプロファイルやDNS設定を追加しません。
Appleの公式サポートと、利用中のDNSサービスが提供する公式手順を照合してください。
設定後の確認とトラブル対応
設定後は、DoHが有効になったと思い込まず、次の項目を確認します。
- ブラウザやOSの設定が有効になっているか
- 選択したDoHリゾルバーが表示されているか
- VPN、ルーター、企業ネットワークが別のDNS設定を適用していないか
- 通常のサイト閲覧、社内サイト、名前解決が必要なアプリが動くか
- DNS設定を解除する手順を確認できるか
DoHを有効にした後に接続できない場合は、まず設定を元に戻せる状態を確保します。
社内サイト、フィルタリング、地域制限、家庭内の名前解決が必要な場合は、ネットワーク管理者やサービス提供者へ確認します。
DoHの設定を変更しても、すでに入力した情報や不正ログインの状態は元に戻りません。
入力やログインの問題がある場合は、DNS設定とは別にサービス提供者へ連絡してください。
DNSリゾルバーの選び方
候補を選ぶ前に、誰にDNS問い合わせを見られたくないのかを決めます。
- 公衆Wi-Fiなど経路上の第三者から隠したい
- 通信事業者のDNSサーバーへ問い合わせを送らない構成にしたい
- 家庭や組織のフィルタリングを維持したい
- 不正ドメインのブロックを組み合わせたい
- 問い合わせの保存期間と利用目的を限定したい
候補の公式プライバシー方針、保存期間、第三者提供、フィルタリング、障害時の対応を比較します。
Cloudflareの1.1.1.1とGoogle Public DNSは、それぞれ公式資料でDNSリゾルバーの機能とログの扱いを説明しています。
| リゾルバー | 公式資料で確認する内容 |
|---|---|
| Cloudflare 1.1.1.1 | 公開DNSリゾルバーの暗号化経路とログの扱い |
| Google Public DNS | DoHの対応、DNSSEC、ログの扱い |
上の記載は各事業者の公式説明に基づく例であり、すべてのDNSリゾルバーに同じ方針があることを示しません。
事業者名だけで選ばず、現在の公式情報を確認してください。
よくある質問
WindowsのDoHとAndroidのプライベートDNSは同じですか?
同じではありません。
WindowsのDoHはDNS問い合わせをHTTPSで送り、AndroidのプライベートDNSはDNS over TLS(DoT)で送ります。
設定名だけで方式を判断せず、利用中のOSの公式仕様を確認してください。
Apple端末ではSafariだけにDoHを設定できますか?
すべてのApple端末で共通するSafari専用の設定としては案内できません。
管理対象端末ではDNS設定ペイロード、個人端末ではOSや専用アプリなど、構成に応じた公式手順を確認します。
DoHを設定した後に社内サイトが開けなくなったらどうしますか?
変更前のDNS設定へ戻せる状態を確保し、社内ネットワークやフィルタリングを管理する担当者へ確認します。
設定を元に戻しても解決しない場合は、ネットワーク管理者やDNSサービス提供者へ相談します。
参考資料
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